・ 子犬現る
それは、春のうららかな昼下がりだった。朝日ヶ丘小学校の裏山で、アルマイトは休息という名目の昼寝をしていた。放課後ならいざ知らず、こんな時間には誰も来ない。
目を覚ましたときには、すでに日は傾いていた。円盤にもたれかかっていたアルマイトは、あわてて立ち上がる。
「まずい!又寝過ごした!」
円盤に乗り込もうとした時だ。足下で何かが動いた。目を向けると、一匹の犬が丸まっていた。まだ子供らしい。しきりにアルマイトのブーツを舐めている。
「なんだ?腹でも減ってるのか?……犬って、何を食べるんだっけ?」
アルマイトは子犬を抱え上げた。どうやら野良らしく、首輪も付けていない。しばらく考えた後、アルマイトは子犬を抱いたまま、円盤に乗り込んだ。
「帰って、調べてみるか」
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・ かわいい〜!
「まあ、かわいい!」
駆け込んできたのは、橙のマスクに、紺色のマントの女性だった。アルジェの初めて見る顔だ。
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・ ミナ・ヘブルです
「君は?」
尋ねるアルジェに、彼女は一礼した。
「失礼しました。私、養成学校から研修に来た、ミナ・ヘブルです。ミナって呼んで下さい」
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・ ワンちゃん…
「おい、いつまでも犬と戯れている場合じゃないだろ。パトロールはどうしたんだ」
ミナの教育担当である、エクタルがやってきた。青いマスクに白いマントといういでたちの男性だ。
「行くぞ、ミナ。アルジェも適当にしろよ」
ミナは、未練たっぷりに部屋を出ていった。
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